【天気の子】世界と彼女、どちらを取るか【感想・評価】
皆さん、こんばんは。
今回は新海誠監督最新作、アニメーション映画『天気の子』についての感想書きたいと思います。一部ネタバレがありますのでご注意ください。
これはーー僕と彼女だけが知っている、
世界の秘密についての物語。
新海誠 監督とは
3年前、国内累計観客動員数1928万人、興行収入約250億円のメガヒットを記録した『君の名は』を手掛けたアニメーション映画の監督です。それまでも『秒速5センチメートル』や『言の葉の庭』など数々のアニメーション映画を手掛けてきた方です。
作風は”新海ワールド”とも称される風景美術の緻密さや美しさが特徴であり、少年少女の恋愛をテーマにした作品が多いです。
今作は前作『君の名は』のメガヒットもあり、今や世界的に注目されるアニメーション映画監督として最新作『天気の子』には非常に高い期待と関心が寄せられています。
『天気の子』感想・評価
ファンタジックでリアリティな純粋な恋の物語
評価:★★★★☆
STORY
「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。
しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、
怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。
そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。
ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らすその少女・陽菜。
彼女には、不思議な能力があった。
東京という都会の雑踏や繁華街の路地裏、下町の古い建物、帆高がお世話になるバーを居抜きした編集プロダクション、深夜のネットカフェ・マクドナルドといった猥雑な場所が主な舞台であり、前作の『君の名は』では、若者の憧れである東京の華々しい”光”の部分にフューチャーされていましたが、今作はラブホテル街や風俗街、廃ビルなど東京の”影”も描かれていました。
物語のテーマは「天気」「雨」「恋」です。記録的異常気象により毎日ずっと雨に見舞われる東京の薄暗い場所を舞台に帆高と陽菜は出会います。
「100%の晴れ女」陽菜の天気を操る不思議な力を使って二人はビジネスを始めるのですが、それをきっかけに二人の仲は徐々に縮まっていきます。
そして、二人に立ちふさがるたくさんの苦難と困難を乗り越え、お互い大切な存在と認知し、恋を実らせました。
世界と一人の少女、どちらを取るか。
世界なんていい、自分のために祈れ。君が必要だ。
とても素敵なストーリーでした。
ボーイミーツガールとしての色が強く、前作『君の名は』と違って上手くいったハッピーエンドという内容とは言えないので、評価が分かれる部分があると思います。
しかし、私はこう思いました。水没した東京、それを受け入れ適応し生きていく人々の姿にも心を打たれると。
確かに二人はあの日、世界を変えてしまったのかもしれないが。
それでも、それでも人は生き続けていく。
「僕たちは大丈夫だ」
舞台装置としての「拳銃」
作中で「拳銃」が登場し、帆高が所持することになりましたが、ファンタジックな設定に拳銃はあまり似つかわしくなかったように感じました。
ただ、家出少年として警察から追われる・未成年の姉弟二人だけで生活し児童相談所に家族をバラバラにされる。それだけでは、二人の男女の仲を裂くには弱かったのか。「拳銃」という違法物を帆高に所持・使用させた感が強かったです。
東京を取り巻く異常気象・・・世界と陽菜を天秤にかけても陽菜を選ぶ。それを強調するための舞台装置としての役割としての印象が強く、ファンタジックな天気の巫女としての能力と「拳銃」が作品内で同居する必要があったのか疑問でした。
東京の影や裏、雑踏の中で陽菜の不思議な力や美しい空模様は上手く融合できていたのですが、「拳銃」は不純物としての印象が強く残りました。それが残念でなりません。
あと、刑事のリーゼントもな!
緻密で繊細で美しく、力強い風景美術
評価:★★★★★
今作では「天気」が物語の中枢にあったため、その素晴らしい風景美術に目を向ける場面が多くその美しさに圧倒されました。
雨天が続く中で、まるで神の奇跡とも思える晴れ間。
差し込む太陽の輝きと暖かさ。
それは劇中でずっと雨の中で過ごし続けてきた人々だけでなく、劇場にいる我々の心も晴れ晴れとさせる、非常に良い描写と演出でした。
また、雨天の雫の一つ一つや、地面に落ちて跳ねる雫。一つ一つへ妥協の許さない書き込みの量にも圧倒されましたね。
前作登場人物を登場させる遊び心
評価:★★★★★
前作『君の名は』の主人公である立花瀧が、その祖母が天気の依頼をした際に登場。『君の名は』から大人に成長した姿で登場し、三葉と再会した後?かは正確に判別がつきませんが、落ち着いた様子・女性へのプレゼントをアドバイスするところから、おそらく三葉と再会した後ではないかと思えました。元気そうな様子が見れて非常に嬉しかったです。
また、ヒロインである宮水三葉も登場しました。帆高が陽菜への誕生日プレゼントで指輪を選んでいたアクセサリーショップの店員として働いていました。大人の女性としての落ち着きと可憐さが素敵でしたね。
更に、宮水四葉も登場。天気が戻った際、学校のベランダで空を見上げる三人の女子高生が登場する場面があり、お馴染みのツインテール姿でかつ身体はすっかり成長していました。
総評
『君の名は』ほどではないが、面白い映画だった。人物描写も丁寧だし風景美術は最高だった。
一方で『君の名は』ほどの物語の完成度が高くなく、演出や音楽の挿入のタイミングなどは『君の名は』を強く想起させた。良くも悪くもこれまで『君の名は』ほど一般受けした作品は新海誠監督の中ではなく、非常に大きな成功を果たした『君の名は』に引っ張られてた部分も感じました。
とても面白い映画であることには間違いないが、メガヒットした前作とどうしても比較されてしまうのは悲しいことである。
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